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宮﨑監督からのメッセージ [漫画・アニメ]

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魔女の宅急便

「あたしこのパイ嫌いなのよね」の真意は?

宮﨑監督は映画完成時の1989年のインタビューで「僕はあのパーティーの女の子が出てきた時のしゃべり方が気に入ってますけどね」と語っていました。なぜなのでしょう?

スタジオジブリのアニメ映画『魔女の宅急便』が今夜、日本テレビ系の「金曜ロードショー」で午後9時半から放送されます。

ジブリ作品の中でも根強い人気がある『魔女の宅急便』の知られざるトリビアを紹介します。


【記事詳細】

思春期の少女の葛藤を描いた『魔女の宅急便』
魔女の血を受け継ぐ13歳の少女キキが、見知らぬ街コリコに辿り着き「魔女の宅急便」というビジネスを始めるという内容。

宮﨑駿監督の映画といえば、それまで『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』のSF活劇の印象が強かったのですが、この作品では一転して、思春期特有の戸惑いや挫折が描かれていました。
 
強烈な印象を植え付けた台詞「あたしこのパイ嫌いなのよね」
そんな映画の中で特に心に残る台詞があります。キキが老婦人に頼まれて、孫娘の誕生日パーティーに向けてニシンのパイを届けるシーンです。
 
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老婦人のパイを焼くのを手伝うキキ
 
故障したオーブンの代わりに、キキは薪を使ってパイを焼くのを手伝い、嵐の中をずぶ濡れになってホウキで飛びながら、パイを届けます。パーティー会場から現れた孫娘はちっともうれしくなさそう。受け取ってはくれたものの「あたしこのパイきらいなのよね」と言い捨てて玄関のドアを閉めます。
 
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誕生日パーティーの少女にキキがニシンのパイを届けるシーン
 
苦労して届けたのに感謝されるどころか冷たい仕打ち。「ひどすぎる」とキキに同情してしまったのは自分だけではないはずです。

一体、宮﨑監督は何を考えて、こんな台詞を少女に言わせたのでしょうか。『魔女の宅急便』について調べる中で、本人がインタビューでその意図を語っていたことが分かりました。
 
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嵐の中でずぶ濡れになりながらパイを運ぶキキ
 
「あれは嘘をついていない、正直な言い方ですよ」宮﨑監督が明かした真意とは?
それは、『ジブリの教科書5 魔女の宅急便』(文春ジブリ文庫)に掲載されている1989年7月当時のインタビューです。映画は完成済み、上映される直前のタイミングで行われたものでした。

宮﨑監督はこの台詞が「キキにとってはショッキングで、すごくダメージになることかもしれない」としつつ、「あたしこのパイきらいなのよね」という少女のしゃべり方が気に入ってると述べていました。

少し長くなりますが、その部分を抜粋してみましょう。
 
「老婦人のパイを届けた時に、女の子から冷たくあしらわれてしまうわけですけど、宅急便の仕事をするというのは、ああいう目にあうことなんですから。特にひどい目にあったわけじゃあなくてね、ああいうことを経験するのが仕事なんです」

「僕はそう思いますし、キキはあそこで自分の甘さを思い知らされたんです。当然、感謝してくれるだろうと思い込んでいたのが……。違うんですよ。お金をもらったから運ばなきゃいけないんです。もし、そこでいい人に出会えたなら、それは幸せなことだと思わなくちゃ……。別に、映画ではそこまでは言ってませんけどね(笑)」

「だから、僕はあのパーティーの女の子が出てきた時のしゃべり方が気に入ってますけどね。あれは嘘をついていない、正直な言い方ですよ。本当にいやなんですよ、要らないっていうのに、またおばあちゃんが料理を送ってきて、みたいな。ああいうことは世間にはよくあることでしょ」

「それはあの場合、キキにとってはショッキングで、すごくダメージになることかもしれないけど、そうやって呑み下していかなければいけないことも、この世の中にはいっぱいあるわけですから」
 
・・・・・・
 
少女の冷たい言葉は、キキが社会と向き合って成長するための通過儀礼だったようです。

「世の中には優しい人ばかりではない」「仕事をしたからといって感謝されるとは限らない」という宮﨑監督からの子ども達へのメッセージが込められているように感じました。
 
老婦人が作ったニシンのパイ.jpg
老婦人が作ったニシンのパイ

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