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「名車探偵」クルマの話 vol.2 [自動車]

フォルクスワーゲン・タイプ1.jpg

フォルクスワーゲン・タイプ1

キューブリックvs.キング
黄色いビートルをめぐる話

ワタシが小学生だった昭和の時代、フォルクスワーゲン・ビートルは「幸せのクルマ」だった。

「ビートルが走る姿を見れば、幸せになれる」というおまじないで、いつ誰がどこから始まったものかはわからないが「口裂け女」的に日本全国の子供たちに広まったのだと思う。

バリエーションは地域によってさまざま。ワタシの地元・鎌倉では「1日に5台見れば幸せになれる」というもので、「その中に黄色いビートルが1台入ればめちゃラッキー」。そしてなぜか「水色のビートルを見たら全部ナシ」だった。


【続き】

ハッピーアイテムの黄色いビートルはスタンリー・キューブリックの手にかかれば「いわくつき」に変貌する。ホラー映画の傑作『シャイニング』(1980年)である。

作家志望のジャック・トランスは、ロッキー山脈の山頂にあるオーバールック・ホテルの冬期休業期間の管理人として雇われ、妻と息子の家族3人で移り住む。しかし、豪雪で外界から遮断されたホテルに閉じこもるうちにジャックの精神はどんどん壊れていく。
 
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原作はホラー小説の帝王・スティーヴン・キング。しかしキングはキューブリックの映画を酷評。物語を大幅に改編され、「血も涙もない話にされた」ことが許せなかったという。そもそもジャック・トランスを演じたジャック・ニコルソンが気に入らず、キャスティング時から反対したという。

主人公は徐々に心を病むのであり、最初から「取り憑(つ)かれ感満載」のニコルソンは全然違う、と。そして、ジャックのクルマは「赤いビートル」と小説に書いたのに、キューブリックが黄色にしたのも不満だった。

黄色いビートルはオープニングシーンに登場する。湖沿いの山道を疾走するビートルを空撮した名シーン。ロケはグレイシャー国立公園で行われ、4ヵ月かけて約17時間分も撮ったという。

ちなみに、一家の異変を察知した料理長ハロランがホテルへ急行するシーンでは、クラッシュした赤いビートルが雪道に転がっている。文句つけすぎのキングに対するキューブリックの「うるせえ!」だとワタシは思う。

キングは1997年に自身の脚本で思い通りの『シャイニング』(テレビドラマ)を撮った。クルマはもちろん赤いビートルである。
 
フォルクスワーゲン・タイプ1.jpg   フォルクスワーゲン・タイプ1

1938年から2003年まで生産された大衆車・ビートル。設計はフェルディナント・ポルシェ。アドルフ・ヒトラーの命により開発。本格的に生産を開始したのは1945年から。映画で使用されているのは1973年式。

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