間違いやすい日本語 vol.1
煮詰まる 「煮詰まる」は「行き詰まる」とどう違う? 本来の意味は? 「煮詰まる」の本来の意味を間違って覚えている人が多いようです。 皆さんは「話し合いが煮詰まる」という表現から、どんな状態を思い浮かべますか? そこで、「煮詰まる」の意味や使い方について解説します。 |
【記事詳細】
「煮詰まる」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |
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「煮詰まる」には、2つの意味があります。
1. 煮えて水分がなくなる 2. 議論や検討が十分に行われて、結論の出る状態になる 煮物が十分に加熱されて完成に近づいた状態から転じて、議論や検討を経て結論を出す段階に近づいたことを表すようになりました。 例えば「話し合いが煮詰まる」は、結論が出る状態を表します。 |
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「煮詰まる」の使い方の注意点は?よく見かける間違った使い方 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |
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「煮詰まる」は本来、「結論が出る状態になること」ですが、逆の意味で使われる場面が多くなっています。過去に文化庁が行った『国語に関する世論調査』では、4割の回答者が「煮詰まる」の意味として「結論が出ない状態になること」を選択しています。 おそらく「行き詰まる」と類似の意味と理解したり、煮汁がなくなって煮物がねばりつく様子を連想したりすることで、議論が膠着するイメージでとらえられているのではないか、と推測されます。 一方で、近年は「煮詰まる」が「行き詰まる」の意味で使われていることを解説している辞書もあります。例えば、国語辞典の『大辞泉』(小学館)には、本来の意味に加えて以下のような補説も加えられています。 |
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『大辞泉』によれば、こうした使い方は、2000年頃から広がったようです。 以上の事柄をふまえると「煮詰まる」は「結論が出る段階になる」「結論が出ずに行き詰まる」という、反対の意味で使われる可能性があるので、文脈から相手の真意を読み取ることが必要になります。 誤解を避ける場合には、後で紹介する類語や「行き詰まる」の言い換え表現を用いたほうがいいかもしれません。 |
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「煮詰まる」の例文は? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |
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「煮詰まる」を利用した例文をご紹介します。いずれも「結論の出る状態になる」の意で使っています。 ・話し合いが煮詰まったため、そろそろ結論が出そうだ。 ・細かい交渉が煮詰まり、ようやく契約の段階に進めそうだ。 ・計画が煮詰まり、具体的なビジョンが描けるようになってきた。 |
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「煮詰まる」を言い換えると?類語は? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |
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続いて「煮詰まる」(結論が出る状態になる)の類似表現を紹介します。 (1)「終盤に入る」 「終盤(読み方:しゅうばん)に入る」は、行われてきた物事・勝負が終わりに近づいていること。 【例文】 ・議論が終盤に入った。 (2)「終局を迎える」 「終局(読み方:しゅうきょく)を迎える」は、物事が落着すること。 【例文】 ・特許を巡る争いはようやく終局を迎えた。 |
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「行き詰まる」と類似の意味を持つ言葉は? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |
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“煮詰まる”が“行き詰まる”の意味で使われているケースがありますが、本来は誤用です。“行き詰まる”の類似の表現を紹介します。 (1)「難航する」 「難航(読み方:なんこう)する」は、物事がうまく進まないこと。 【例文】 ・ 議論が行き詰まったため、会議は難航した。 (2)「停滞する」 物事が滞って、前に進まないこと。 【例文】 ・長い間、景気が停滞しています。 (3)「膠着」 “膠着”(こうちゃく)は、事態が固まって、ほとんど進まないこと。身動きが取れないこと。 【例文】 ・その計画は現在、膠着状態となっています。 |
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以上、「煮詰まる」の意味や使い方についての解説です。 逆の意味で使われる可能性があるので、相手が使っているときには、どんな意味で使っているのか推し量る必要がありそうです。 |
2023-06-21 05:42
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